今から始める!SNS活用術 “嶋﨑量弁護士に聞く”特別インタビュー(前編)

2022年3月14日

「労働組合の活動にSNSの活用を!」と呼びかけてスタートしたこの連載。
ノウハウやポイントを詳しく紹介してきましたが、いまだ踏み出せないという組織もあるのでは?
なぜ、労働組合がSNS活用に取り組まなければいけないの?なぜフォロワーが増えないの?日々、どんな内容を発信すればいいの?広報担当者の悩みは尽きませんが、SNSを駆使した発信をしている嶋﨑量弁護士が、その切実な悩みに丁寧に答えてくださいました。
(インタビューは、前編と後編の2回にわけて掲載します)

弁護士(神奈川総合法律事務所)
2007年弁護士登録。日本労働弁護団常任幹事。連合神奈川の法律顧問事務所である神奈川総合法律事務所に所属。労働組合向けの「SNS活用講座」の講師も務める。
著書に『5年たったら正社員!? 無期転換のためのワークルール』(旬報社)、『裁量労働制はなぜ危険か―「働き方改革」の闇』(共著、岩波ブックレット)など。
Twitter:@shima_chikara
Facebookページ「弁護士 嶋﨑量」


SNSはコミュニケーション・ツール
-労働側弁護士として日々精力的に活動されていますが、SNSの活用は?

多くの労働問題に携わる中で、労働組合等と接点がないような人たちにも、労働問題に関する情報を伝える必要があると考えて始めました。労働組合にはSNSに抵抗がある人も多いですが、労働組合こそ有効に活用してほしいコミュニケーション・ツールです。

私が主に使っているのはTwitterです。フォロワー数は2万人超で、連合関係者のみなさんとTwitter上でも交流しています。日本労働弁護団のFacebookページなど、組織アカウントの運用にも関わっていました。個人と組織の両面でSNSを活用し、発信をしています。

日頃、労働関係のタイムリーな記事にコメントをつけたり、労働法制に関わるテーマ(派遣労働の規制強化など)で発信したり、自分の執筆した労働関係の記事や労使紛争に関する記者会見、労働組合の街宣など(ベルコ争議など)も発信します。

-SNSのメリットとは?

SNSの特徴は、①発信に拡散力・影響力が大きいこと、②リアルタイムのやり取りが可能なこと、③情報の受け手として相互交流できること。この特徴を活かすことが活用のポイントだと思います。

例えば機関紙と違い、SNSでは読み手が意見をダイレクトに寄せることができ、さらに情報を拡げていける可能性もあります。

他方で、組合員内部で情報交換だけを目的にするなら、Facebookなどを活用してメンバーを限定したコミュニティをつくることもできます。コロナ禍で制約される対面での活動を一部代替するツールとして活用する余地もあります(いわば「SNSの懇親会代替機能」)。夜の会合には参加できない、懇親会は苦手という組合員で、SNSなら参加してみようと思える方もいる。メンバー限定なら気軽に発言もできるので、そういう懇親会の一部を代替する機能も担えます。

SNSは、目的によって多様な活用法があると思います。

まわり巡って労働組合全体のメリットに
-労働組合のSNS活用の現状をどうみていますか?

多くの労働組合がSNSの活用を運動方針に掲げていらっしゃいますが、実際の活用では苦心されていると思います。

-なぜ、活用が進まないのでしょう?

活用する意義・目的を組織内で確認し、SNS活用を進める体制構築が重要だと思います。

今、労働組合の広報担当者は苦労されていると思います。「従前の広報はそのままに電子媒体もSNSも」と仕事が増えている。特に若手担当者は、「若いから得意だろう」と、方針も固まらず、組織全体からネタは集まらず、運用だけ丸投げされがち。他方で、SNSの特徴を知らない方から投稿内容に口は出され、活用が進まない責任は負わされる…。

仕事の業務指示になぞらえれば、ダメなのは分かるでしょう。

SNSを本気で活用しようというなら、トップを含め組織全体で自組織におけるSNS活用の意義・目的を共有し、具体的な運用方法は実務を担当する広報担当者に広い裁量と権限を与えサポートするべきでしょう。当然広報担当者の仕事は増えるので、担当者を増やすか、従来の広報の仕事を整理すべきでしょう。

-労働組合がSNS活用を進める意義・目的とは?

誰にどのような目的で情報を伝えたいのか、SNS活用の意義・目的を組織内で確認することは重要です。

当該組織にとって発信する直接のメリットがない情報でも、連合の仲間や社会全体には意義のあるネタは沢山あります。例えば、単組の「こんな活動をした」というネタは、組織内ではありふれた情報でも組織外には知られていない、労働組合だからこその素晴らしいネタの宝庫です。外部からは「労働組合ってこんなことやってるんだ」「うちの会社にもこんな労働組合がほしい」「うちの組合でもやろう」と気づきになります。世間に知られていない、労働組合の取り組みを発信するインパクトは大きく、「何かあったら労働組合を頼ろう・加入しよう」と労働組合、連合の認知度を上げ、信頼感や存在感の下支えになるでしょう。それが、組織拡大の契機や組合活動のやりがい・誇りにもつながります。

労働組合の外向けの発信は重要な時代になっており、SNSはその効果的なツールですので、その意義を連合全体で共有してほしいと切に思います。

私は労働組合のアカウントをよくチェックしますが、フォロワー数は組織人員数と比べて圧倒的に少なく、発信やフォローも内向きの印象です。「フォロワー数が増えない」と悩む担当者も多いと思いますが、「フォローして」という組織内への呼びかけも徹底していないと思います(責任は広報担当ではなく、組織全体にあります)。「〇〇労働組合」の発信にもっとも利害関係があるのはその組合員ですし(当該組合員がフォローしないのに部外者にフォローしてもらおうと期待するのは無茶な話)、組合員間にアカウントの存在が意識されれば、担当者に発信ネタも集まるはずです。

フォロワー数ばかり気にする必要はないですが、フォロワー数の多いアカウントは影響力が大きいのは事実。少なくとも構成組織・地方連合会の枠を超え、連合の仲間で積極的に相互フォローし合えば、理論的にはフォロワー数は飛躍的に増え、発信力アップに役立ちます。

➝インタビューの後編はこちらから

※この記事は、連合が企画・編集する「月刊連合3月号」をWEB用に再編集したものです。