2010年11月15日掲載
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- 9-1〜9-4表 産業別の男女間賃金格差 ほか
解説
- 各産業の学歴別に男女間の賃金格差を示したのが、9-1表「産業別の男女間賃金格差」である。計算は、男性賃金を基準とし、年齢勤続年数を同一条件としたパーシェ式で行なっている。産業計企業規模計では、「所定内」の学歴計で男性100に対し女性の指数81.0と19.0ポイントの格差である。学歴別には、中卒71.1、高卒75.2、短大卒85.4、大卒87.2と、高学歴層ほど小さな格差となっている。
- 9-1図は、産業計の所定内賃金と一時金について、規模別に男女間格差を示したものである。まず所定内では、「1000人以上規模」と「100〜999人規模」は83前後でほぼ同じ格差、「10〜99人規模」は77.0で、ほぼ5ポイント大きな格差となっている。
- 一時金の格差で注目すべきは、所定内賃金とはまったく逆に、小企業で小さく大企業で大きい格差になっていることである。「1000人以上規模」では74.4に対し、「10〜99人規模」では87.5である。一時金のウエイトが大きくない小企業では、その配分が比較的平等に行われているということであろう。
9-1図 規模別にみた男女間賃金格差 産業計(男性=100)

所定内賃金の格差を産業別にみると、建設業、製造業の生産工程部門をかかえる産業で30ポイント程度の大きな格差が存在している。15ポイント以下の小さな格差となっているのは、電気業、水道業、放送業、映像・音声・文字情報制作業、鉄道業、道路旅客運送業、協同組織金融業、学校教育、医療業、社会保健・社会福祉・介護の10業種である。
- 9-2表は、産業別の所定内賃金の男女間格差(学歴計)を1985年から2009年まで追ったものである。また9-3表は、産業計についての男女間賃金格差を規模別学歴別に追ったものである。
- 9-2図は、所定内賃金についての男女間格差の推移を、産業計の規模別に示したものである。(製造業の1000人以上規模についても示しているが、その理由は後述。)注目すべきは、全体的に、産業計1000人以上規模を除いて、右上がり傾向、つまり男女間格差の縮小傾向を示していることである。規模計でみると、1985年時点では指数73.5であったものが、90年以降上昇傾向を強め、2004年には79.5と、19年間で6ポイントの格差縮小である。なお2005年以降は、従来の傾向とは異なった数値となっている。規模計でも、規模別でも2004年よりも小さな数値、つまり2004年比で格差拡大を示す数値となっている。これは、今まで度々述べてきた、調査方式の変更によって非正規社員が表面化し、女性賃金が押し下げられたことによるものと考えられが、2008年、2009年は再び右上がりになっている。
- ではこのことをもって男女間の賃金格差は縮小に向かっているかといえば、実はそうは単純な問題ではない。まず高卒者に限定したパーシェ比較を行って、格差の推移をみた9-3図である。ここでは、9-2図のような右上がり傾向は顕著なものではない。「100〜999人規模」、「10〜99人規模」は若干の右上がりであるが、規模計は横ばいの傾向である。9-4図は、大卒者についての推移を示したものであるが、ここでも右上がり傾向は見られず、全体的に横ばいの傾向である。
- 高卒者(9-3図)も大卒者(9-4図)も横ばいなのに、学歴計(9-2図)では何故右上がりで格差縮小なのか。その理由は、女性労働者の学歴構成の変化である。9-5図は、全女性労働者に占める短大・大学卒業者の比率の推移を、規模別にみたものである。いずれの規模も急速に高学歴化が進行しており、規模計では1985年の18.3%から2009年の51.9%へ、33.6ポイントの上昇である。男女間の賃金格差は、高学歴層で小さく、低学歴層で大きい。学歴計でみたときの格差縮小は、実は相対的に格差が小さい高学歴層のウエイトが大きくなることによってもたらされたものなのである。
9-2図 男女間パーシェ格差指数の推移・学歴計
産業計・所定内賃金 男性水準=100

9-3図 男女間パーシェ格差指数の推移・高卒者
産業計・所定内賃金 男性水準=100

9-4図 男女間パーシェ格差指数の推移・大卒者
産業計・所定内賃金 男性水準=100

- 以上のことをもって「男女間格差は縮小傾向にある」といってよいかどうかは、きわめて微妙な問題である。確かに学歴計でみる限り、その傾向は指摘できる。しかしそれは、高学歴層のウエイトが高まることによって生じた現象なのであって、各学歴層の格差が縮小したわけではないのである。ただし、「格差の小さい層が増大傾向にあるのだから、全体的な格差は縮小に向かっている」という指摘は誤りではない。
- もう一つ解かなければならない問題がある。9-2図で、なぜ産業計の1000人以上規模は、とくに1987年から2000年までの間、格差拡大の傾向をたどったのかの問題である。9-6図は、高卒標準労働者生涯賃金の男女間格差を示したものであるが、ここではすべての企業規模が横ばい傾向で、1000人以上規模で格差が拡大する傾向はみられない。つまり1000人以上規模の標準者については格差拡大傾向はなく、標準者以外も対象としたパーシェ比較では格差が拡大しているわけである。このことから、1000人以上規模での格差拡大には、中途採用者が影響しているのではないかとの推測ができる。
- 9-2図では、製造業1000人以上規模の推移も示している。製造業1000人以上規模では、横ばい傾向で、産業計1000人以上規模のような格差拡大傾向はみられない。このことから産業計1000人以上規模の格差拡大は、製造業以外のある産業の中途採用者賃金が原因となっていることになる。
- この「ある産業」とは、実は保険業である。保険業は、そのほとんどが「1000人以上規模」である。1000人以上規模の女性労働者にしめる保険業の比率は相当に大きく、1990年時点では17.9%、2008年でほぼ9.7%であり、しかも保険外交員を中心に中途採用者が多い。9-2表で、保険業の格差推移をみると、1990年には90をこえていた指数が今日では70前後で、大幅な格差拡大があったことがわかる。出来高払いの色彩が強い外交員賃金が、大きく低下したことがその原因である。つまり産業計1000人以上規模の格差拡大は、保険外交員賃金の低下が原因だったわけである。
9-5図 女性労働者の大学・短大卒業者比率の推移
産業計
9-6図 男女間生涯賃金格差指数の推移・高卒者
産業計・所定内賃金 男性水準=100
