2003年9月1日掲載
185号「船員身分証明書条約(改正)」を加える
6月に開催された第91回ILO総会において、185号条約「船員身分証明書条約(改正)」が採択された。同条約の批准の可否は日本人船員の雇用問題に直結するものであり、連合は8月22日、優先的に批准を求めるILO条約リストを改訂することを第25回中央執行委員会で確認した。これにもどづき、連合は関係構成組織とともに、同条約の批准を強く政府に働きかけていく。
本年6月に開催された第91回ILO総会にて185号条約「船員身分証明書条約(改正)」が採択された。これは、2001年9月11日の米国同時多発テロ後に各国(特に米国)において保安・テロ対策が強化され、それまでの108号条約「船員身分証明書条約」に定められた船員身分証明要件が時代遅れとなっているという認識を受けて、急遽議題に加えられたもので、基準設定議題としては異例の一回審議で採択されたものである。
2002年7月18日の第11回連合中執にて確認された「優先的に批准を求めるILO条約リスト」には、特定産業・業種カテゴリの中に108号条約が含まれている。
今回の新条約の採択に伴い、優先条約リスト上の扱いについて、条約に直接関連する構成組織である海員組合に諮ったところ、185号条約を新たにリストに登録し現行の108号条約はリストから抹消するという結論が寄せられた。
これを受けて、「優先条約リスト」を添付の通り改訂する。
なお、同条約の批准の可否は日本人船員の雇用問題に直結する。また、テロ対策強化を求めて各国に条約制定を働きかけた米国を初めとする先進国は率先して条約を批准するべきである、というのが労働側の総意である。この点を考慮して、日本の政労使代表は総会の討議において「日本が批准できる条約」を目指して努力してきた。連合は関係構成組織とともに、同条約の批准を強く政府に働きかけていく。
優先的に批准を求めるILO条約リスト
| 条約番号 採択年 |
条約名 | 批准 国数 |
備考 |
|---|---|---|---|
| I.中核的労働基準 | |||
| 105号 1957年 |
強制労働の廃止 (最優先条約) |
161 | あらゆる形態の強制労働の廃止を排除する基本的条約。 |
| 111号 1958年 |
雇用及び職業についての差別待遇 (最優先条約) |
159 | 人種、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身、社会的出身他に基づいて行われる全ての雇用及び職業上の差別を撤廃するよう求める条約。 |
| II.結社の自由 | |||
| 151号 1978年 |
公務における団結権保護及び雇用条件決定のための手続き | 41 | 公務労働における団結権、労働条件決定における労働組合の参加、紛争処理、政治的権利について規定する官公労働者の労働基本権回復に不可欠な条約。 |
| III.労働条件 | |||
| 47号 1935年 |
労働時間を週40時間への短縮 | 14 | 労基法32条には特例措置が残されており、週40時間全面適用のためには重要な条約。 |
| 132号 1970年 |
年次有給休暇 | 33 | 年間最低3労働週、うち2労働週は非分割を求める条約。ゆとりのある生活実現のためには重要である。 |
| 140号 1974年 |
有休教育休暇 | 33 | 一般教育、労働組合教育なども対象とする有休教育休暇制度。 |
| 94号 1949年 |
公契約における労働条項 | 59 | 公的機関が他の民間会社とある事業に関し契約する場合の、当該民間企業が雇用する労働者の労働条件に関する条約。 |
| 158号 1982年 |
使用者の発意による雇用の終了 | 33 | 労働者を不当解雇から保護し、公平な第三者機関への提訴を可能とし、挙証責任が労働者のみに負わされないことを内容とする。 |
| 171号 1990年 |
夜業 | 8 | 夜業労働者の健康を保護し、家族的および社会的責任を果たすことを援助するための措置を義務づける条約。 |
| 173号 1992年 |
使用者の支払不能の場合における労働者債権の保護 | 15 | 労働者債権が特権によって優先的に保護されることを明確にした条約。 |
| 175号 1994年 |
パートタイム労働 | 10 | パート労働者に対する社会保障制度や労働条件の均等待遇を規定。 |
| 177号 1996年 |
ホームワーク | 4 | ホームワーカーの労働条件を向上させる政策を策定すること、均等待遇の促進することを規定。 |
| IV.安全衛生 | |||
| 155号 1981年 |
労働安全衛生 | 40 | 安全衛生対策の強化、基準の国際化などの観点からも、条約の批准が必要である。 |
| 148号 1977年 |
作業環境 | 41 | 空気汚染、騒音および振動など問題のある作業環境から労働者を保護するための基本的条約。 |
| V.社会保障 | |||
| 128号 1967年 |
障害・老齢・遺族給付 | 16 | 障害者、高齢者(65歳以上)および遺族への給付資格と水準に関する条約。 |
| VI.女性雇用 | |||
| 183号 2000年 |
母性保護条約の改正 | 4 | 103号条約(1952年)の保護規定をさらに強化した改正条約。 |
| VII.特定産業・業種 | |||
| 137号 1973年 |
港湾労働における新しい荷役方法の社会的影響 | 23 | 常用雇用を奨励し、最低雇用期間および最低収入の保障を義務づける条約。 |
| 149号 1977年 |
看護職員の雇用、労働条件、生活状態 | 37 | 住民の健康水準の向上を目的に、看護職員の労働条件、教育訓練を改善する政策を義務づける条約。 |
| 153号 1979年 |
路面運送における労働時間及び休息期間 | 7 | 4時間を超える連続運転を禁止するなど、路面運送における労働・休息時間を規定する条約。 |
| 185号 2003年 |
船員身分証明書(改正) | 0 | 108号条約(1958年)を改正し、一時上陸や乗下船等船員の移動について、その円滑化と身分証明書の信頼性の確保を図る。 |
批准国数は、ILO全加盟国(176国)の中で批准している国の数(2003年8月現在)
批准済み条約
| 日本の批准日 | 条約名(採択年、条約番号) |
|---|---|
| 1922年11月23日 | 失業条約(1919年・第2号) |
| 1922年11月23日 | 海員紹介条約(1920年・第9号) |
| 1923年12月19日 | 最低年齢(農業)条約(1921年・第10号) (第138号条約批准により廃棄) |
| 1924年6月7日 | 最低年齢(海上)条約(1920年・第7号) (第138号条約批准により廃棄) |
| 1924年6月7日 | 年少者体格検査(海上)条約(1921年・第16号) |
| 1926年8月7日 | 最低年齢(工業)条約(1919年・第5号) (第138号条約批准により廃棄) |
| 1928年10月8日 | 労働者補償(職業病)条約(1925年・第18号) |
| 1928年10月8日 | 均等待遇(災害補償)条約(1925年・第19号) |
| 1928年10月8日 | 移民監督条約(1926年・第21号) |
| 1930年12月4日 | 最低年齢(石炭夫及び火夫)条約(1921年・第15号) (第138号条約批准により廃棄) |
| 1931年3月16日 | 重量標示(船舶運送の包装貨物条約(1929年・第27号) |
| 1932年11月21日 | 強制労働条約(1930年・第29号) |
| 1936年6月6日 | 労働者補償(職業病)改正条約(1934年・第42号) (第121号条約批准により廃棄) |
| 1938年9月8日 | 土民労働者募集条約(1936年・第50号) |
| 1953年10月20日 | 労働監督条約(1947年・第81号) |
| 1953年10月20日 | 職業安定組織条約(1948年・第88号) |
| 1953年10月20日 | 団結権及び団体交渉権条約(1949年・第98号) |
| 1954年5月27日 | 最終条項改正条約(1946年・第80号) |
| 1955年8月22日 | 失業補償(海難)条約(1920年・第8号) |
| 1955年8月22日 | 海員の雇入契約条約(1926年・第22号) |
| 1955年8月22日 | 健康検査(船員)条約(1946年・第73号) |
| 1955年8月22日 | 最低年齢(海上)改正条約(1936年・第58号) (第138号条約批准により廃棄) |
| 1956年6月11日 | 坑内作業(女子)条約(1935年・第45号) |
| 1956年6月11日 | 有料職業紹介所改正条約(1949年・第96号) (第181号条約批准により廃棄) |
| 1965年6月14日 | 結社の自由及び団結権保護条約(1948年・第87号) |
| 1967年8月24日 | 同一報酬条約(1951年・第100号) |
| 1971年4月29日 | 最低賃金決定制度条約(1928年・第26号) |
| 1971年4月29日 | 最終条項改正条約(1961年・第116号) |
| 1971年4月29日 | 最低賃金決定条約(1970年・第131号) |
| 1973年7月31日 | 放射線保護条約(1960年・第115号) |
| 1973年7月31日 | 機械防護条約(1963年・第119号) |
| 1974年6月7日 | 業務災害給付条約(1964年・第121号) |
| 1975年7月29日 | 船舶料理士資格証明条約(1946年・第69号) |
| 1976年2月2日 | 社会保障(最低基準)条約(1952年・第102号) |
| 1977年7月26日 | 職業がん条約(1974年・第139号) |
| 1978年7月3日 | 災害防止(船員)条約(1970年・第134号) |
| 1983年5月31日 | 商船(最低基準)条約(1976年・第147号) |
| 1986年6月10日 | 雇用政策条約(1964年・第122号) |
| 1986年6月10日 | 人的資源開発条約(1975年・第142号) |
| 1992年6月12日 | 職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(1983年・第159号) |
| 1993年6月21日 | 衛生(商業及び事務所)条約(1964年・第120号) |
| 1995年6月9日 | 家族的責任を有する労働者条約(1981年・第156号) |
| 1999年7月28日 | 民間職業仲介事業所条約(1997年・第181号) |
| 2000年6月5日 | 最低年齢条約(1973年・第138号) |
| 2001年6月18日 | 最悪の形態の児童労働条約(1999年・第182号)※ |
| 2002年6月14日 | 三者の間の協議(国際労働基準)条約(1976年・第144号)※ |
※:2000年の「新優先条約リスト」で最重要条約に定められていた条約
太字:「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」(1998年)で定められた中核的基準となる4分野8条約