「クラシノソコアゲ応援団」特別団員メッセージ

いま、連合が全国で展開している「クラシノソコアゲ応援団」の活動にご賛同いただき、
“特別応援団”に加わっていただいた識者、文化人の皆様から熱いメッセージが届きました!
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働く人に分配するパイはたくさんある。それを働く人のもとに取り戻すことが、暮らしの底上げに繋がります!

【第1回】獨協大学経済学部教授・経済アナリスト森永卓郎 氏

日本のサラリーマンの一番多い中間的な年収というのが、ちょうど300万円になり、物凄い勢いでサラリーマンの生活が悪化してきている!

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働く人の“暮らしの底”はどこまで落ち込んだのか

私が2003年に「年収300万円時代を生き抜く経済学」という本を出した時にはですね、『そんなことはありうるはずがないじゃないか』と言われたんですけれども、実は昨年の国税庁の統計で見ると、一番人数が多いのは年収300万から400万の階層ですが、それとほぼ同じだけ年収200万から300万の層がいるんです。つまり、いまの日本のサラリーマンの一番多い、中間的な年収というのが、ちょうど300万円になったということで、物凄い勢いでサラリーマンの生活が悪化してきている。
安倍政権になってから、実質賃金で見るともう4%くらい賃金が落ちているんですね。
これはいまのような政策を続ける限り、止め処もなく落ちて行くと思います。年収100万・200万というのが普通の賃金になってしまう時代というのがもう間近に近づいているのだと思います。

格差が広がっているのに、実感できない人もいるのはなぜか

実は東京都港区の昨年発表された住民の平均課税所得が1,267万円だったんです。年収でいうと1,800万円位だと思います。そういった人たちは、例えばひと部屋3億・4億・5億のマンションに住んでいる。そういう人が実は何万何十万人単位で日本には生まれてきているんですね。
なぜその格差の実感がないかというと、そういった人たちと暮らしの中で一切接点がないからなんだと思います。週末になると大型クルーザーで海に出て、そして高級レストランでご飯を食べ、デパートに行けば別室で外商が全部物を持ってきてくれる、という人との接点がそもそも庶民にはないからなんです。
その富裕層の方も積極的に自分たちの暮らしを公開しようとは思わないんですね。
なんでかっていうと、そういうものを見せることに彼らにとって何のメリットもないからなんですね。庶民の怒りを買うだけ。この<庶民の怒りを買うだけ>っていうのは、私の知る限りでは、富裕層のほとんどが全く働いていないんです。その富裕層を革命的に増やしたっていうのが、最近の新自由主義型の経済政策なんだと私は思っています。

いま安倍総理が進めている同一労働同一賃金というのは、一見良さそうに見えて実は非常に恐ろしいことを狙っているんだと思います。

労働組合に期待することは?

いま安倍総理が進めている同一労働同一賃金というのは、一見良さそうに見えて実は非常に恐ろしいことを狙っているんだと思います。どういう形で「同一労働同一賃金」を実現するかっていうと、いまのパートタイマー、アルバイト、嘱託、派遣、そういった非正社員の人の処遇に正社員の方を合わせていこう、つまり、その正社員の給料っていうのをいまの半分位に下げていこうというのがこの「同一労働同一賃金政策」の本当の目指す姿なんだと、思っているんですね。
かつて労働組合は経営側と大きな対立をしていたんですけれども、最近すっかり経営のことをおもんばかる体制になっていて、賃上げのことを要求すると会社側が、経営が厳しくなっちゃうんじゃないかっていうふうに思い過ぎているんだと思います。その結果、いま企業はとてつもない内部留保を貯めこむようになっています。それは日本経済にとってとてつもなく悪いことなんですね。
なんでかというと、例えば昨年の10、12月期のGDPは前期比で0.4%のマイナス成長に陥りました。これはボーナスがガクンと減ったからなんです。2014年度の日本経済がマイナス成長に陥ったのも、実は実質賃金が大きく落ちたからなんです。つまりですね、みんなでこう・・・我慢して生活を抑えるっていうことをしていくと、それが結局経済を縮小させるっていうことにも繋がってしまう。
もちろん財源がないっていうか分配するパイがないんであれば、それは仕方がないっていう部分もあるんですけれども、実はパイはたくさんあるんです。それを働く人のもとに取り戻すっていうことが、実は生活者の暮らしの底上げにも繋がりますし、日本経済の発展にも繋がるっていうことで、いまの明らかにヒドイ労働分配率の引き下げっていうこのトレンドを切り返さないと、私は日本が良くならないと思っています。