事務局長談話

 
2024年05月10日
「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.セキュリティ・クリアランスにおける労働者保護の必要性への認識が高まった
 5月10日、「重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律」が参議院本会議において可決・成立した。本法は、国家における情報保全措置の一環として、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報にアクセスする必要がある者に対し、政府が信頼性を調査・確認しアクセスを認める、いわゆるセキュリティ・クリアランスを制度化するものである。
 連合は、立法の背景にある主要国の情報保全のあり方や産業界などからのニーズを踏まえれば、法整備の必要性には理解を示せるとする一方で、本制度は本来守られるべき労働者個人のプライバシー情報を政府が調査するものであり、労働者保護の徹底が重要であるとしてきた。国会審議では、連合組織内議員懇談会、連合フォーラム議員などと連携した丁寧な質疑を通じて、収集した個人情報の厳重な管理と漏洩防止対策、適性調査の結果や同意拒否・取下げの目的外利用の禁止など、本法における労働者保護の必要性への認識が高まったと受け止める。

2.本制度を健全に運用する上で最も重要なのは労使間の適切なコミュニケーション
 重要経済安保情報として指定する情報の範囲や制度の具体的な運用基準などは、今後検討されることとなるが、民間企業などにおいて、本制度を健全に導入・運用する上で最も重要なことは、附帯決議にあるとおり、労使間の適切なコミュニケーションである。制度を導入する際は、秘密区画の整備や秘密保持管理の強化、対象業務や対象者の範囲の明示、秘密区画における労働安全衛生の確保に加え、適性調査の結果や調査への同意拒否・取下げによる不合理な配置転換・解雇など労働者への不利益取扱いの禁止について、あらかじめ労使協定を締結することなどが必要となる。
 なお、アクセス権が付与された労働者は、当該業務に従事する間だけでなく、私生活でも一定の制約を受けることが想定される。アクセス権保持に対する理解を醸成するためにも、アクセス権を保持することへの対価と負担に報いる処遇面についても検討が必要である。

3.国民の知る権利や事後的な検証について附帯決議に沿った厳格な運用を求める
 本法は、与野党の修正案により、情報の指定や解除、適性評価の実施状況を国会に報告し公表することが義務づけられ、附帯決議では、情報保全の必要性と国民の知る権利のバランスに立った運用を行うこととされた。国民の知る権利や事後的な検証についても留意が必要であり、修正案および附帯決議に沿った厳格な運用を求めていく。

以 上